質問をしないこと
息子が、ある日、突然いった。
「扉をさ、急にあけないでよね。それから、夜に寝てるかどうかチェックする必要もないからね」
「ちょっと待ちや。今までノックもせんといきなりあけたことなんかあらへんよ。失礼なこと言わんとって」
「ま、とにかくさ・・・」
うやむやといいながら、息子は去った。
台所に残されただんなと二人、顔を見合わせた。
「やっぱり、何をしてるのか聞いたほうがいいんじゃない?」
「あんな、君もかつては男の子やったんやから、その程度のことわからへん?」
「どういうこと?」
「年頃の健康な男子がやな、扉を閉めて自分の部屋にこもったら、することって決まってるやん」
1) コンピューターゲーム(ちなみにネットにはまだつなげていません・・・すまん・・・息子よ・・・でもつなげても、監視ツールでばっちりだもーん)
2) エロ本を見る
3) DVDを見る
4) オナニー (ちょっと早い?)
5) タバコをすう
6) ドラッグ (シンナー、マリファナ、コカイン、などなど)
息子の場合、5と6はないと確信がもてる。わたしたちはタバコを吸わないから、すったらにおいですぐわかるし、ドラッグだって、体調の変化なんかで多分、わかると思う。大体、お小遣いの動きとかも把握してるしね。
それで、それ以外のことだったら、もし聞かれても正直には答えられないのでは・・・。
「君やったら、親から、扉閉めて何してんの?って聞かれて、『オナニーしてます!』って答えられる?」
「・・・」
「そうするとさ、嘘をつく状態に追い込むことにならへん? そんで、嘘つかれたからって、信用関係がちょとやばくなったりするやん。そやから、これは、きかへんほうがええ質問なんとちゃう?」
「・・・でも、何をしているか、気になるよ」
「まあ、選択肢の1から4まで全部でしょうねえ・・・」
「うん・・・哲学の本を読んで、人間の深淵については考えてないだろうねえ・・・」
「・・・この年でそれしてたほうが心配やで」
という会話をしまして。
数日後。
学校に行っている間、息子は部屋の扉を開けています。それで、洗ったTシャツなどを持っていっただんなが何気なく、机の上を見ると。
グリーン・デスティニーのDVDが。
「やっぱりさー、夜中にカンフー映画を見てたんだねー」
「まあ、いいんじゃない? カンフー程度やったら・・・ら・・・ら・・・」
「どうしたの?」
「・・・あの映画、たしか、かなり濃厚なシーンが・・・あったんちゃうか・・・と・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・そういえば、本棚の上に、ティッシュが大量に丸めてあったんだけど・・・」
「・・・やっとんのかな?」
「風邪引いてたから・・・鼻をかんだんじゃないかな・・・」
「科学捜査・・・」
「顕微鏡で見てみようか?」
「・・・誰が、人の精子見たいねん? あー?」
グリーン・デスティニーっていい映画なんですけどね。まあ、いろんなものの見方があるってことよ。
さりげなく、息子にティッシューは使ったらきちんとすてるように言っておこうと思います。
それで、今週末は、さりげなくいいレストランに食事に連れて行って、ひそかにお祝いをしてやることにしました(笑)。