にわにはにわにわとりがいる:二話
第一羽:
子供が小さいとき、自分の頭の中でいろいろ考えて、けっこう無茶なことを言ったりしたりする。
農家から買ってきた卵に、ニワトリの小さな羽根がついているのを見て、
「あ、卵がひよこに成りかけてる!」
卵に羽が生えて、ひよこが生まれると思っていたらしい。
「これ、あっためてもいい?? ねえ、ねえ、ねえ」
「あかん。これは、ニワトリにはならへんねん。卵がひよこにはならへんの。この中にひよこの素が入ってんの」
「じゃあ、それがひよこになるんだったら、暖めてもいい?」
「うーん、黄身が入っていても、ひよこはできないんだよね・・・」
だんなが言った。
「・・・・なあ、悪いんやけど、黄身はひよこにはならへんよ。黄身はひよこが育つ栄養なんやけど…」
「・・・・・うそ」
「ほんま」
るーるーるー、僕のジンセイって・・・。
泣くだんな。
「ねえ、卵あっためてもいい?」
「だから、これはひよこにはならへんの」
「何で?」
「ヤッてないからや」
「ヤッてたらできるの?」
「ほかにも、方法はあるけどな、それが一番簡単や。そやからおまえが生まれたんやで」
「ヤッたの?」
「そうや」
*******************************
第二羽:
薬の副作用で、義母も頭の中でいろいろ考えて、無茶を言う。
昨日、義母ががいきなり聞いた。
「ねえ、今日の夕ご飯のニワトリ〆た?」
「いえ、まだですけど・・・」
「早く〆て頂戴」
昔、ニワトリを飼っていたころに帰っているらしい。
「おなかがすいてるわけじゃないのよ、でも、せっかく〆たんだったら食べたいわ」
「すみません、わたし、ニワトリの〆かた下手なんです」
「あら、じゃあいいわ。下手な人が〆ると美味しくないのよ」
「役立たずですみません」
ニワトリを〆ずにすんでほっとしました。